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QGIS(Quantum GIS)の解説

QGISとは

QGISは、オープンソースの地理情報システム(GIS)ソフトウェアです。様々なベクターおよびラスター形式の地理空間データの閲覧、編集、分析機能を提供します。商用GISソフトウェアの代替として広く使用されており、Windows、macOS、Linux、Androidなど複数のプラットフォームで利用可能です。QGISは無料で利用でき、活発なコミュニティによって継続的に開発・改善されています。

QGISの主な特徴

QGISのインターフェース

QGISのインターフェースは以下の主要な要素で構成されています:

QGISのカスタマイズ

QGISのインターフェースは高度にカスタマイズ可能です。ツールバーやパネルの表示/非表示、配置変更、ショートカットキーの設定など、ユーザーの好みに合わせた作業環境を構築できます。また、「設定」メニューから様々な動作設定を変更することも可能です。

QGISの基本操作

プロジェクトの作成と保存

QGISでは、すべての作業はプロジェクトとして管理されます。プロジェクトには、レイヤー、スタイル設定、座標系などの情報が含まれます。

プロジェクトの基本操作

データの読み込み

QGISでは様々な方法でデータを読み込むことができます:

Shapefileの読み込み

  1. 「レイヤー」→「データソースマネージャ」を選択
  2. 「ベクター」タブを選択
  3. 「ソース種類」で「ファイル」を選択
  4. 「参照」ボタンをクリックしてShapefileを選択
  5. 「追加」ボタンをクリックしてレイヤーを読み込む

レイヤーの操作

レイヤーはQGISの基本的な構成要素です。レイヤーパネルでは以下の操作が可能です:

地図のナビゲーション

マップキャンバス上での基本的なナビゲーション操作:

QGISでのデータ編集

ベクターデータの編集

QGISでは、ポイント、ライン、ポリゴンなどのベクターデータを作成・編集できます:

  1. 編集したいレイヤーを選択
  2. 「レイヤー」→「編集モード切替」を選択(または鉛筆アイコンをクリック)
  3. 編集ツール(地物追加、ノード編集など)を使用してデータを編集
  4. 編集完了後、再度「編集モード切替」をクリックして変更を保存

新規ポイントの追加

  1. ポイントレイヤーを選択して編集モードに切り替え
  2. 「地物追加」ツールを選択
  3. マップキャンバス上でクリックしてポイントを配置
  4. 属性情報を入力するダイアログが表示されるので、必要な情報を入力
  5. 「OK」をクリックして確定
  6. 編集モードを終了して変更を保存

属性テーブルの編集

地物の属性情報は属性テーブルで管理・編集できます:

  1. レイヤーを右クリック→「属性テーブルを開く」
  2. 編集モードに切り替え(鉛筆アイコンをクリック)
  3. セルをクリックして値を編集
  4. 新しいフィールド(列)の追加: 「フィールド計算機」ボタンをクリック
  5. 編集完了後、編集モードを終了して変更を保存

ジオメトリの編集ツール

QGISには様々なジオメトリ編集ツールが用意されています:

QGISでの空間分析

プロセッシングツールボックス

QGISのプロセッシングツールボックスには、数百の空間分析アルゴリズムが用意されています:

基本的な空間分析

QGISで実行できる代表的な空間分析:

バッファ分析の実行

  1. 「プロセッシング」→「ツールボックス」を開く
  2. 検索ボックスに「バッファ」と入力
  3. 「バッファ」アルゴリズムをダブルクリック
  4. 入力レイヤー、距離などのパラメータを設定
  5. 「実行」ボタンをクリックして処理を実行
  6. 結果が新しいレイヤーとして追加される

モデルビルダー

複数の処理ステップを組み合わせたワークフローを作成できるツールです:

QGISでの地図作成

レイヤースタイリング

QGISでは、レイヤーの視覚的な表現を詳細にカスタマイズできます:

人口データの段階的スタイリング

  1. 人口データを含むポリゴンレイヤーを右クリック→「プロパティ」→「シンボロジー」
  2. レンダラータイプを「段階に分けられた」に変更
  3. 値フィールドで「人口」を選択
  4. 分類方法(等間隔、等量、自然階級など)を選択
  5. クラス数を設定(例:5)
  6. 色の範囲を選択(例:白から赤へのグラデーション)
  7. 「分類」ボタンをクリックして階級を生成
  8. 「OK」をクリックして適用

ラベリング

地物にラベルを表示するための設定:

印刷レイアウト

QGISの印刷レイアウトは、プロフェッショナルな地図を作成するための強力なツールです:

  1. 「プロジェクト」→「新規印刷レイアウト」を選択
  2. レイアウト名を入力して「OK」
  3. 「アイテム追加」ツールを使用して、地図、凡例、縮尺記号、方位記号、テキスト、画像などを配置
  4. 各アイテムのプロパティを設定(右側のパネル)
  5. 「レイアウト」→「PDFとしてエクスポート」などで出力

アトラス機能

アトラスは、同じレイアウトテンプレートを使用して複数の地図を自動生成する機能です。例えば、各都道府県ごとの地図や、各調査地点ごとの詳細図などを効率的に作成できます。印刷レイアウトの「アトラス」パネルで設定します。

QGISの拡張機能

プラグイン

QGISの機能はプラグインによって拡張できます:

人気のあるプラグイン

Python連携

QGISはPythonと深く統合されており、様々な方法でPythonを活用できます:

簡単なPythonスクリプトの例

# 現在のプロジェクト内のすべてのレイヤーを表示
from qgis.core import QgsProject

layers = QgsProject.instance().mapLayers().values()
for layer in layers:
    print(f"レイヤー名: {layer.name()}, タイプ: {layer.type()}")
    
# 選択した地物の属性を表示
layer = iface.activeLayer()
features = layer.selectedFeatures()
for feature in features:
    attrs = feature.attributes()
    print(attrs)

QGISの応用例

都市計画・国土計画

防災・減災

環境保全・生態学

ビジネス・マーケティング

QGISの学習リソース

公式ドキュメント

コミュニティリソース

日本語の学習リソース

QGISのバージョンと更新

QGISは定期的に更新されており、以下のリリースサイクルで提供されています:

本番環境では安定性を重視するLTRバージョンが推奨されますが、最新機能を試したい場合は通常リリースを使用することもできます。

QGISのインストールとアップデート

QGISは公式ウェブサイト(https://qgis.org/ja/site/forusers/download.html)からダウンロードできます。Windowsでは専用インストーラー、macOSではパッケージ、Linuxではパッケージマネージャーを通じてインストールできます。アップデートは新しいバージョンをインストールするか、OSによってはパッケージマネージャーを通じて行います。

まとめ

QGISは、地理空間データの閲覧、編集、分析、可視化のための強力なオープンソースGISソフトウェアです。商用GISソフトウェアに匹敵する機能を無料で提供し、プラグインシステムやPython連携による高い拡張性を持っています。

QGISの主な利点:

初心者からGIS専門家まで、様々なレベルのユーザーがQGISを活用して地理空間データの処理や分析を行っています。都市計画、環境保全、防災、ビジネス分析など、多様な分野での応用が可能です。無料で利用できる高機能GISソフトウェアとして、QGISは地理空間情報の民主化に大きく貢献しています。